不動産投資は個人で行うというイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。不動産は投資商品のひとつではあるものの、継続的に運営することで利益を得るため、事業として考えるのが、実は一般的なのです。今回は、法人で不動産投資を行う上でのメリットやデメリットについて解説。また、法人として融資を受ける際の審査基準や受け方などを紹介していきます。
1. 法人で不動産投資する5つのメリット
まずは、法人で不動産投資をするメリットについて見ていきましょう。個人で投資する場合とは違い、法人の場合はメリットが多くあります。
1-1.節税効果が高まる
1つめのメリットは節税について。これはかなり大きなメリットになります。個人で不動産投資を行う場合、納税金額は所得が多いほど高額になり、所得税と住民税を合算すると最大で55%にもなります。
対して、法人の場合の税率は20~30%台とかなり低くなります。よって、不動産投資によって得られる所得が高額になる場合は、法人で投資をするほうが節税効果は高まると言えます。
1-2.経費計上できる範囲が拡大する
2つめは経費に関してのメリットです。法人の場合は、個人の場合よりも、単純に経費形状できる範囲が拡大するので、それがそのままメリットになります。例えば、生命保険ですが、個人の場合は所得控除の対象になります。一方の法人の場合は、保険の種類にもよりますが全額経費上することが可能。そして、不動産投資を行う上での経費は主に以下のものがあります。
・ローンの金利
・減価償却費
・管理費
・修繕費
・損害保険料
・入居者募集にかかる宣伝費
・交通費
・接待交際費
・消耗品
・勉強や情報取集費
・不動産投資をする際にかかる税金
・税理士や司法書士への報酬
など、多くの経費がかかります。個人の場合は、基本的に「収益を得るために必要な経費」しか、計上することができません。一方、法人の場合は上記に挙げたものすべてを計上することが可能です。ただ、明確な判断基準があるわけではなく、あくまでも「常識の範囲内であればOK」ということを覚えておいてください。
1-3.繰越損失の期間が延長される
3つめのメリットは繰越損失の期間について。繰越損失とは、その年度で所得を足しても赤字になってしまう場合に、翌年以降も損失を繰り越すことができるという制度です。個人で青色申告をしているならば、この期間が最大で3年間になります。しかし、法人であるならば、最大10年間の繰り越しが可能になるのです。
1-4. 融資が受けやすくなる
4つめのメリットは、融資が受けやすくなるというもの。単純に個人と比べて法人の方が社会的な信用が高いため、融資の審査に通りやすくなるのです。その理由としては、
個人に比べて、より正確な会計処理が行われていると考えられること、法人化する際の登記によって会社の情報がオープンになっていることなどが挙げられます。また、融資を受けられる金額も法人の方が高いです。
1-5. 決算月を任意決定できる
最後のメリットは決算月についてです。事業年度の期間が1月1日~12月31日と定められている個人の場合、決算月は12月となります。それに対して法人の場合は、決算月を自由に選べるので、計画的に節税対策を行うことができるようになるのです。また、個人の場合の確定申告は3月15日までにする必要があります。法人の場合は、決算月から2ヶ月後までに申告及び納税をする必要があるので、覚えておいてください。
2. 法人で不動産投資する5つのデメリット
これまで、法人で不動産投資するメリットについてお伝えしてきました。しかし、メリットだけではなく、デメリットもあることを忘れてはいけません。ここからは、そのデメリットについてお話していきます。
2-1. 法人を維持する費用がかかる
1つめのデメリットは法人の維持についてです。個人の場合と違い、法人における会計や税務などの処理は複雑になります。そのため、税理士と契約を結ぶことになるので、その費用として年でおおよそ50~70万円ほどかかります。また、社会保険料なども維持費用に含まれます。ただ、税理士については、費用対効果によってはデメリットと言い切れません。税理士にかかる費用よりも節税効果が高くなることで、デメリットがメリットになる可能性も十分にあるのです。
2-2. 長期譲渡所得の優遇制度が使えない
2つめは、長期譲渡所得について。個人の場合は、不動産の所有期間によって売却した際の所得税が以下のように変ってきます。
・所有する不動産を5年以内で売却した場合の税率:39%
・不動産を5年以上所有して売却した場合の税率:20%
このように、長期で所有して売却した場合には、税率が安くなる「長期譲渡所得の優遇制度」という制度があります。先述したようにこれは、個人の場合でのみ使える制度であるため、法人の場合は使うことができません。
2-3. 赤字でも法人住民税の納付義務がある
3つめのデメリットとして、法人住民税があります。法人住民税は、たとえ赤字であっても納付する義務が発生します。市町村にとって納税額の変動はありますが、年間で平均7万円ほどとなっています。少額に感じられるかもしれませんが、赤字になってしまった場合は、少しでも支出を抑えたいもの。法人住民税について忘れないようにしましょう。
2-4. 接待交際費用は損金算入に限界がある
4つめは接待交際費用についてです。接待交際費用は、一定の金額までしか費用として認められません。もし超えてしまった場合は、損金として計上できないということを覚えておいてください。接待交際と称して、食事会や飲み会を頻繁に行わないように気を付けましょう。
2-5. 決算業務の手間が増える
5つめは決算業務についてのデメリット。法人の場合は、個人の場合と違って確定申告の際に必要な書類の作成に手間がかかります。ただ、税理士と契約している場合は、この限りではありません。必要な書類の作成は、契約している税理士にすべて任せることで、一概にデメリットとはいい切れないのです。
3. 【法人で不動産購入する場合】融資の審査基準と受け方
事業として不動産投資を行っている企業の多くが、融資を受けて不動産を購入しており、それが一般的になっています。ここでは、融資を受ける際の審査基準と、その受け方について解説していきます。
3-1. 審査基準1:不動産の担保価値
金融機関が最初に審査するのは、購入する不動産の担保価値になります。不動産に融資する際の担保として、金融機関は抵当権設定を行います。これは、融資を受けることができる金額は、その不動産の担保価値に比例するということ。つまり、不動産の購入金額ではなく、担保価値によって決まるということを覚えておいてください。また、金融機関のほとんどは、以下の基準で土地と建物の評価を行います。
・土地の価値を評価する際の基準:路線価
・建物の価値を評価する際の基準:経年劣化・再調達価格
3-2. 審査基準2:法人としての信用
2つめの基準は法人としての信用になります。審査される信用は主に以下のものです。
・収入に対して、どのくらいの割合が返済額にあてられるのか
・過去の返済履歴
・法人だけでなく、会社の代表をはじめとする経営陣の資産背景など
過去の返済履歴も確認されるので、過去に返済に関してのトラブルを起こしており、ブラックリストに登録されていた場合は、融資を受けることはできません。
3-3. 法人で不動産購入する際の融資の受け方
法人の財務状況によって、融資可能金額は大きくかわってきます。そのため、いかにして財務状況をよくしておくか、またどのようにして印象よく見せるかがカギとなります。融資を受けるためには、以下の書類を用意する必要があります。
・貸借対照表
決算日時点での財務状況を記した書類。
・損益計算書
1年間でどのくらい儲かって、どのくらい損をしたのかなどを記した書類。
これらの種類を用意した上で、金融機関に説明しなければなりません。金融機関によっては審査が非常に厳しいところもあるため、自分でやるよりもプロに任せることをおススメします。ファーストステージでは、融資を専門とする部門があり、融資に関するあらゆる実務を代行いたします。また、不動産の購入に必要なローン審査に合格していただければ、あなたがやることは契約書にサインだけで大丈夫。
ぜひ、法人で不動産投資のために融資を検討されている場合は、弊社までお気軽にご相談ください。
4.まとめ
不動産投資は個人よりも法人の中で事業としてやるほうが、多くのメリットがあります。また、金融機関からの融資を検討している場合は、その審査基準やどんな書類が必要なのかをしっかりと確認した上で審査を受けるようにしましょう。