ライフイベントの出費や老後資金のことを考え、投資による資産形成を考える公務員の方は多いのではないでしょうか。特に不動産投資は不労所得の代名詞として、昔から人気のある投資手法の1つです。しかし公務員という役職は不動産投資が許されているのか、気になるところだと思います。今回は公務員の副業事情を説明した上で、気をつけるべきポイントについてお伝えしていきたいと思います。

 

1.公務員は投資してもよいのか

公務員は副業を禁止されていることは、皆さんご存じの通りかと思います。つい先日も、消防士の男性がYouTubeでゲーム実況チャンネルを運営し、115万円の収益を得ていたとして懲戒処分を受けたとの報道がありました。(※1)

※1 消防士ユーチューバー、ゲーム実況で収入115万円…副業禁止で懲戒「認識甘かった」 出展元:2020/01/12  読売新聞オンライン 

 

1-1.公務員は副業禁止

そもそもなぜ公務員は副業が禁止されているのか。国家公務員法の第103条に明記されています。(※2)

 

(私企業からの隔離)

第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。 

※2 国家公務員法:e-Gov法令検索

 

また国家公務員法第104条、地方公務員法の第38条(※3)にも同様に副業を制限する内容が書かれています。

 

(他の事業又は事務の関与制限)

第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

 

(営利企業への従事等の制限)

第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

 

つまるところ、公務員は国民全体の奉仕者として、職務の公正や中立性を要求されている以上、特定の業種に利益を与えていると疑われないため、副業が禁止されているのです。

※3 地方公務員法 | e-Gov法令検索

 

1-2.3つの原則を守ることができれば可能

ですが、公務員でありながら文筆業で大成されている方がいるのも事実。これは、公務員の根幹を為す3つの原則を守っているからに他なりません。その3つの原則とは、それぞれ守秘義務の徹底、信用失墜行為をしない、そして国家公務員法第104条、地方公務員法の第38条にあるように、許可を取る、ということ。これらが守れるのであれば、公務員の業務以外で資産を形成することは可能ということになります。

 

ですが公務員の業務外で働くと言っても、時間は有限。資産形成目的での副業であれば、やはり投資を考える方は多いのではないでしょうか。特に不動産投資は、自分の所持している、または購入した不動産(土地、建物など)を他者に貸し出し、家賃収入を得る投資です。月々の家賃が定期的に入ってくるので、維持費や金融機関への返済を差し引いた分は、完全に投資家の収入となります。自分が稼がなくても収入が得られる(不労所得)ので、公務員の副業にもピッタリと言えるでしょう。

 

 

2. 公務員が投資するメリット、デメリット

公務員でも資産形成として投資が可能である、ということを踏まえて、公務員だからこそのメリットとデメリットをお伝えしていきます。

 

2-1.公務員が投資するメリット

・ローン査定で有利

一般的に、不動産投資を行うためには、まずその物件を購入しなくてはいけません。その際ローンを組むことになると思うのですが、もし不安定な職業だと査定の目も厳しくなります。その点公務員という職業は安定性が魅力です。そのため金融機関の査定も通りやすく、また金利も優遇してもらえるメリットがあります。

 

・収入が安定しており、計画が立てやすい

一般的に、公務員にはクビや倒産といったことはなく、収入も安定しています。そのため収入も見通しが持ちやすく、どのような期間で資産形成をやっていくかなど、計画が立てやすいのは大きいメリットと言えるでしょう。

 

2-2.公務員が投資するデメリット

・不利な投資もある

投資にもさまざまな種類がありますが、株式投資やFXなど、いわゆる「売り時」を把握して瞬時売りに出す、と言った投資方法は、公務員には向きません。言わずもがな、その方法は一日中株価を見ることができるタイプの人に向いており、公務員という特に仕事への専念が求められ、できなかった場合は免職になる職種には不向きでしょう。

 

・知識は必要

公務員は安定した職業であり、不動産会社も営業相手として選びたい職種でもあります。その際収益性の低い土地を買わされることがないように、もし興味があっても信頼できる不動産かきちんと見極めることが必要となってくるでしょう。

 

 

3.気をつけるべきポイント

3-1.確定申告が必要

言うまでもなくあくまで投資は副業であり、公務員の仕事が主となるので、給与以外の所得が年間20万円を超える場合は、公務員でも確定申告が必要です。期限を過ぎると無申告加算税が課されてしまうので、忘れずに申告するようにしましょう。

 

3-2.インサイダー取引に注意

インサイダー取引とは上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株などを売買、自己の利益を図ろうとするものです。これは金融商品取引法で禁止されており、公務員に限らずしてはいけないことですが、公務員には守秘義務の徹底が義務づけられています。特にその点に関しては特に注意を払う必要があるでしょう。

 

3-3. 職場への確認は重要

前述したように、公務員は副業に許可が必要と定められています。今後も公務員を続けていきたいと思っているのなら、予想外のトラブルを回避するためにも職場の上司や長に相談、許可を取ることは必須と言えるでしょう。

 

 

4. まとめ

いかがでしょうか?今回は公務員の副業事情を説明した上で、気をつけるべきポイントについてお伝えしてきました。

公務員とは誰もがなれるわけではありません。やりがいは勿論のこと、その安定性は魅力的です。トラブルなどで折角手に入れた職や地位が危うくなることが無いよう、知識はしっかり蓄え、もし不安なことがあれば職場で相談することも必要でしょう。無理の無い範囲で、自分に合った投資スタイルで資産形成を行っていきましょう。