ライフイベントに必要な出費や漠然とした老後の不安など、お金に関わる不安は常について回ります。ただ貯金を続けるだけではなく、資産運用を考える人は多いのではないでしょうか。「貯蓄から投資へ」と言われて久しい昨今、今回は資産運用方法としての「投資」をテーマに、貯蓄と投資のメリット・デメリットをお伝えします。

 

1. 「貯蓄から投資へ」とは

公的年金の不安や長寿化によって、漠然とした老後の不安は誰しもが感じていることでしょう。またライフイベントにおいてもさまざまな出費があります。自分の労働力だけでお金を増やすのは限界があるので、お金を元手にしてお金を増やすやり方が「投資」です。「貯蓄から投資へ」、という言葉は「貯蓄に回しているお金を投資に活用して資産形成を行おう」という現在の時流から生まれた言葉と言えるでしょう。

 

1-1. 投資が長らく浸透していない理由

そもそも貯蓄の習慣が日本に根付いているのは、かつての時代の名残とも言えます。高度経済成長期やバブル期の日本は金利も高く、1990年の日本銀行の年利は約6%。年利とは1年ごとにその利率分お金が増えていく計算になるので、およそ17年も経てば預けた金額は2倍になっている計算になります。預けているだけでお金が増えていくのであれば、わざわざ投資する必要もなかったでしょう。

しかし現在は低金利政策が続いており、「銀行に預けるだけで金が増える」時代は終わりました。資産運用として「投資」を手段とするのは、現代の生きる術の一つとも言えます。

 

2. なぜ投資が重要視されているのか

投資にしろ、貯蓄にしろ、「将来に向けてお金を準備する」という点では一致しています。

その将来に向けてのお金が「資産」であり、「資産形成」には、「貯蓄」と「投資」の2つの方法があります。資産形成方法として「投資」が注目されている昨今、その理由を説明していきたいと思います。

 

2-1.  貯蓄と投資の違い

一般的には、「貯蓄」とはお金を蓄えることで、銀行への預金などがこれにあたります。一方、「投資」とは利益を見込んでお金を出すことで、株式や投資信託などの購入がこの「投資」にあたります。

銀行などに預けている普通預金などは、自由に使える(流動性の高い)お金と言えます。

一方株式や投資信託などを利用した「投資」は、長い期間をかけて少しずつ増やしていくものなので、お金として引き出して使うためには、投資した資産を売却して現金に換えるなど、一定の手順を踏む必要があるので自由に使いづらい(流動性が低い)お金と言えるでしょう。

現在は金利も低いので、貯蓄は資産形成には向いていないのが実情です。一方「投資」は値上がりや利益の分配などを通じて、預貯金よりも利益を得られる可能性が高いため、教育や老後資金など、ある程度先を見越した備えのために活用するのに向いています。

 

2-2. 貯蓄だけでは足りない時代に

前述したように、低金利での現代ではただ銀行に預けただけではお金は増えません。それに加え、ライフイベントの出費はもちろんのこと、公的年金だけでは老後の生活が難しいことも明らかになっています。

例えば、夫婦で子どもがいる世帯の場合。「子ども1人にかかる学習費」は、すべて国公立に通った場合で1000万円程度、私立に通った場合で2300万円程度(※1)という調査結果も。新築住宅の平均金額も、一戸建てにしろマンションにしろ3000万円は下りません。(※2)

それに加え、老後の生活も考えなくてはいけません。高齢夫婦世帯の年金受給額は、平均すると月額20万円程度と言われています。最低限な生活に必要な金額はおおよそ約22万円ですから、(※3)毎月約2万円を貯蓄から取り崩すことになります。しかしこれはあくまで最低限な金額。趣味や旅行など、ゆとりある生活がしたいのならば、必要な金額はなんと36万円!そうなると毎月約16万円を貯蓄から切り崩すことになり、1年で約190万円、10年で1900万円必要な計算になります。

総括すると、ライフイベントの出費もある中で老後資金を蓄えるのは、あまりにハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。

 

※1 日本政策金融公庫 令和2年度「教育費負担の実態調査(勤務者世帯)」

※2 住宅金融支援機構 令和2年度「フラット35利用者調査」

※3 生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」

 

3. 貯蓄のメリット・デメリット

ここまで資産形成の現状をお伝えしてきましたが、資産形成の2つの方法「貯蓄」「投資」どちらにもメリット、デメリットがあるのも事実。ケースバイケースの例も確かに存在するので、参考にしていただければと思います。

 

3-1.貯蓄のメリット

当然ですが、投資と違って「貯蓄」されたお金はよほどの事がない限り無くなることはありません。また流動性が高いので、必要であればすぐ手元に戻すこともできます。リスクを回避したい方や、貯蓄分だけで老後資金を賄えそうだという方は無理にリスクを侵す必要はないでしょう。

 

3-2.貯蓄のデメリット

現在、金利はかなりの低さに設定されており、銀行に預けているだけでお金が増えることはまずありません。老後などを見越して資金を増やしたい方には資産形成としての「貯蓄」は向いていないでしょう。

 

 

4. 投資のメリット・デメリット

「貯蓄」のメリット・デメリットについてお伝えしてきましたが、次は「投資」のメリット・デメリットについてお伝えします。「投資」と「貯蓄」の異なる点は、ハイリスクハイリターンという点。元金がなくなってしまう可能性もありますが、長期的に見れば元金を大金にすることも可能です。詳しくご紹介します。

 

4-1. 投資のメリット

投資にはさまざまなスタイルがありますが、代表的なものは株と言えるでしょう。株は変動値が高く、多くの人が買うほど価値が上がり、多くの人が手放すほど価値は下がります。一般的に業績が好調な企業ほど株が買われやすく、株の価値も上がっていくので、中長期的に見れば元金より大きな利益を生むでしょう。老後の資産形成の方法として、投資は最適解の一つとも言えます。

また投資には、中長期的に行っていくことで、投資資金を運用して得られた利益が更に運用されて増えていく「複利」の効果があります。また投資期間が長いことで、投資による価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できます。

 

4-2. 投資のデメリット

前述したように、投資にはリスクがあるのも事実。株価は人の取引によって決まるので、国際情勢や景気、企業の業績など、さまざまな要因で株価は変動する可能性があります。「株で損した」というのは、株価が落ちて元が取れなくなったということ。貯蓄と違い、自分の所有するお金が無くなるケースもあることは自覚しておきましょう。

また流動性が低いため、売りたいときに売れなかったり、希望する価格に中々ならないのも事実です。投資を始めるときはメリット・デメリット含めきちんと把握しておく必要があるでしょう。

 

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は資産形成として「投資」をテーマに、メリットやデメリットについてご紹介しました。前述したように、「貯蓄」も「投資」もそれぞれメリット・デメリットが存在します。どちらか一方に偏るのではなく、上手く自分の持っているお金を分配することが賢く資産形成をする秘訣と言えるでしょう。